雑談


F1(一世代交配)種と固定種と遺伝子組換え

 種の袋を見るとF1とか一世代交配とか一代交配とか書いてあるのを知っているだろうか?そしてこれの意味を知って使っている人がどれほどいるだろうか?F1というのは、メンデルの優勢遺伝の法則を利用して人間に都合の良い野菜が育つように調整したものである。メンデルの法則は中学だか高校だかで習うと思うが、簡単に説明する時によく人間の血液型が持ち出される。人間の血液型には大きく分けてA型、B型、O型、AB型の4種類があるが実はこれらには詳しく書くとA型はAA型とAO型、B型はBB型とBO型、O型はOO型、AB型はそのままAB型という組み合わせがある。ここでO型はA型やB型と比べて劣勢遺伝子となり逆にA型やB型はO型に対して優勢遺伝子となる。つまりAO型とBO型となった場合、劣性遺伝子は陰に隠れて表立っては優勢遺伝子の影響を受ける事になるので、AO型はA型、BO型はB型となるのである。A型とB型は優越の差が無いのでA型とB型がくっつけばAB型となるのだ。で、F1というのはこれの何を利用しているのかと言うと、例えばA型を「病気に強い」、B型を「収量が多い」、O型は「病気に弱く収量が少ない」遺伝子だとすると、AA型やAO型は「病気に強いが終了が少ない」、BB型やBO型は「病気には強く無いが収量は多い」、OO型は「病気に弱く収量が少ない」、AB型は「病気に強く収量が多い」という事になる。で、種やさんとしてはこのAB型の品種を作りたい訳だ。では任意的にこのAB型の品種を作るにはどうしたら良いか・・・?を考えるとAA型とBB型を交配すればそこから出来る種は確実にAB型になるわけで。この組み合わせを種やさんは必死で探す訳だ。実際には収量と病気だけでなく、病気も色々な病気があるし、大きさや味、形、栽培期間なんかも考慮して組み合わせを探していく形になり膨大な労力が必要となるんだけれど一度その組み合わせを見つけてしまえば確実に良い商品が出来るようになる訳だ。そしてこれは種屋さんにとっては大きな利益をもたらすことになる。もちろん農家にとってもうれしいものだ。だが、F1は上記のような理由で作られているのでF1種の種を採ってその種を蒔いても親と同じもの・・・前述の説明では「病気に強く収量が多い」ものが出来るとは限らないという事になる。なぜならAB型とAB型を交配した場合、その子供はAA型、BB型、AB型の3種類が出来る可能性があるからだ。このパターンの場合親と同じものが出来る確立は50%である。この数字を見ると悪く無いと思う人もいるかもしれないが、実際にはこれも前述のようにもっと色々な組み合わせを考慮している。ということは親と同じものが出来る確立はかなり低くなり場合によっては10%以下になる場合もありえる。10個蒔いて1個しか思っていたものが出来ないとなると生産性は悪すぎるので通常の農家としてはNGだ。種を買った方がはるかにマシという事になるので、F1品種が増えてきているのである。
 それに対して、親から採った種を蒔いたら親と同じようなものが出来る野菜もまだまだ残っている。これを固定種と呼んでいる。固定種の場合はF1と比べると厳密に見ればどうしてもバラツキが出るのだが、最初はバラツキが多かったものを良いものだけを選別を何年・何十年に渡って繰り返してきたところ安定して来たものを固定種と呼んでいる。いわゆる伝統野菜がこの固定種の事だ。これの種を採ったらだいたい親と同じものが出来るが人工授粉が前提となる。自然交配した場合は違う品種の近時種と交配した場合は親と違うものが出来てしまうからだ。
 最後に遺伝子組換えだが、これは通常では絶対に交配できない種の遺伝子を生産植物に組み込んで、使用するものだ。例えばアブラナ科の小松菜と白菜は交配できるし、ナス科のピーマンと唐辛子は交配できるが、小松菜とピーマンは交配できない。花粉を付けても受粉しない。しかし遺伝子組換えだと必要な遺伝子を組み込む事が出来るのでありえない交配が可能となるのだ。


食料自給率

 食料自給率が40%を切った・・なんて話が出て久しい。このページのトップにもそういう記述をしたような・・・。さてさてこの食料自給率なのだが、実は裏があったりもする。食料自給率が40%を切ったというのはあくまでも「カロリーベースで」という事なのだ。
 どういう事かというと、重量ベースとかでは無いというのがミソ。つまり日本で作られる食料が40%という訳では無いという事。特に食生活の変化で、油や肉、砂糖等の高カロリーなものが食生活に占める割合が増えたという事で、結果としてカロリーベースでの食料自給率が下がったという訳だ。例えば野菜の自給率は実際には75%を超えていたりもする。今では難しいけれど過去のように粗食な食生活に戻すと食料自給率は何もしなくても高くなっていく事になる。
 とは言え、日本の農業が危機的状況にあるのは事実だと思う。実際出荷しているグループの研修会なんかに参加すると高齢者が多数を占める。このまま行けば数年後このグループはどうなっているのか疑問に思える部分もある。現在日本の農業を支えているのは65歳以上のお年寄りが大半なのだ。


有機農業、自然農、無農薬、減農薬、特別栽培・・・

 最近よく耳すると思うこれらの言葉の意味分かりますか?
 無農薬とは、2年以上化学農薬を使用せずにいた圃場で栽培された農産物を意味します。つまりは自然農薬の使用は認められています。自然農薬というのは基本的に自然由来のもので岩石を砕いた粉を混ぜて水に溶かしたものとか・・・は自然農薬に分類されています。また酢酸なんかを原料にしたものや除虫菊(蚊取り線香の原料)由来のものも自然農薬となります。
 無化学肥料とは、あまり聞かない言葉ですが、2年以上化学合成された肥料を用いない圃場で栽培された農作物に使われる言葉です。化学合成された肥料の代表はやっぱり化成肥料ですね。石灰は石灰石を燃やして砕いたものが生石灰、それに水をかけて乾燥させたものが消石灰なので自然肥料に分類されているようです。苦土石灰も基本的には岩石を粉砕して製造するそうなので自然肥料に分類されます。
  有機とは、上記の二つを合わせ持ったもので、無農薬・無化学肥料によって栽培されたものを言います。なお、上記については口頭や個人販売での表示には規制はありませんが、上記の言葉を印刷して商品に掲示する場合は、公的認証機関による審査に合格した上で表示ができるようになります。これは食品表示においてJAS法で定められています。認証にはかなりの金額がかかりますので、私のように小規模農家では「農薬・化学肥料未使用栽培」と表示する場合が多いようです。
 自然農とは・・・明確な定義がありません。団体によって判断はマチマチで有機農業の定義にも含まれていますが、無肥料栽培、無除草栽培、不耕機栽培の一部または全部を言う場合が多いです。ただ普通に堆肥や鶏糞なんかを使用して、普通に耕していても自然農と名乗っているケースもあるようです。
 減農薬は、その地域で一般的に使用される農薬の量を半分以下にした栽培方法です。その地域で・・というのが曲者で、○○の産地となっているところでは同じ野菜を同じ場所で大規模の育てるので病害虫の発生が多発する為、その他の地域と比べて農薬の散布量が多くなります。つまり一大産地で一般的に農薬の散布回数が20回だったとしたら10回以下だったら減農薬となる訳です。でも産地として有名で無い場所で一般的に農薬の散布回数が4回の場所の場合は2回以下で減農薬となります。
 減化学肥料は、その地域で一般的に使用される化学肥料の量を半分以下にした栽培方法です。考え方は減農薬と同じです。
 特別栽培は、上記の減農薬・減化学肥料の両方を合わせ持ったもので、その地域で一般的に使用される農薬・化学肥料の量をそれぞれ半分以下にして栽培した方法です。有機栽培も特別栽培に含まれます。
 三重の安心安全マークは、特別栽培に近いけれど、農薬の使用量が三重県の標準使用量の70%以下(30%以上削減)、化学肥料の使用量が70%以下(30%削減)して栽培された作物について三重県が認定するものです。かなり甘い規格なので認定を受けるのは難しく無い・・・というかほんの少しの努力というか意識だけで達成できる水準です。


農業を始めた訳

 そもそも何で農業なんだ?
 実は最初はもっと単純な話だったのだ。
 2008年夏の時点で、我が家の庭は完全に飽和状態になってしまった。
果樹が成長して、どうにもならない状態に陥ってしまったのだ。
仕方が無いので、移植先を探していたのだ。当初はリゾート物件を探していた。なぜなら土地の単価が安かったから。そして海際なら趣味のダイビングとの併用ができると思ったから。
 そんな中、実家の母から田んぼを1反売りたい人がいる・・・という情報があって買う気になっていた。ここで農地法の問題が浮上。農地というのは簡単に売買できないのだ。簡単に言うと農地は農家でしか買う事が出来ない。で、普通の人が農家になるには新規就農の申請が必要でその条件の一つに5反要件というのがある。つまり最初は5反以上からスタートしなさいって訳。5反って簡単に言うと5000m2な訳。こんなに広い土地は当然いらない。そこで山林物件とか雑種地とかを探すことにしたのだが・・・・結構値段が高い。完全に予算オーバーな訳。
 やっぱり買うなら農地か?ちなみに最初の田んぼでは私は1反350万を提示していた。私も相場が分かっていなかったが、相手も相場がわかっておらず、その値段では売れないということで決裂した。ちなみに現在の相場は1反100万程度なので、私の提示額は破格の金額だったのだ。無論今では、1反350万も出す気は無いのだけれど・・。
 そんなこんなで、名張市の農業委員会に相談に行ったりしているうちに、青蓮寺パイロットファームというのがあると知って話を聞きに行ったら、良い土地があるとの事だった。ところが紹介された土地は7555m2。当初の予算は350万だったのだから完全に予算オーバなんだけれど、価格的には魅力的。一応話を進めることにしたのだ。
 ところがリーマンショックの影響をモロに受けた会社が赤字転落。ここで借金をしてまで土地を購入するのはどうか?という判断をし、最大の拠出金額を600万に修正して交渉したのだけれど、交渉決裂。それ以外の土地を模索する事となった。しかし、なかなかうまく行かない。そんな中以前600万で交渉していた土地が飛び地の1050m2を加えて500万でどうか?という話が出てきた。とりあえず、この話に乗ることにしたのだった。
 しかし、この土地が養鶏業者に管理を丸投げしていた状態だったので飛び地の1050u以外は完全に鶏糞の産廃処理場状態で土壌分析すると超多肥状態で使い物にならない事が判明。
 仕方が無いので、農業委員会に相談して名張市で2009年12月に4000u程の土地を借りることになった。さらに伊賀市の1050uも2010年3月に購入することとなった。これで農業を始めることとなったんだ。


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